4年ぶりに受けた面接は、駅前の施設の清掃員でした。
結果は不採用です。そのあと参加したゴミ拾いのボランティアも、1回で終わりました。しかも最後は、声をかけてくれた人を私のほうからブロックしています。
うまくいった話ではありません。それでも、家から出て、人のいる場所に立った記録です。同じように止まっている人に何か伝わればと思って書きます。
4年ぶりの面接は、駅前の清掃員だった
清掃員なら、できると思った
仕事を探すとき、まず考えたのは、人と話さなくて済むかどうかでした。
清掃員ならコミュニケーションがないので自分にもできるだろう。そう思いました。それと同時に、清掃の仕事なら雇ってもらえるのではないか、という期待もありました。
正直に書くと、選べる立場ではないという自覚がありました。
あえて駅前を選んだ
インターネットで求人を見ていて、気づいたことがあります。
知らない街の名前より、記憶に残っている場所のほうに、自然と指が伸びていくのです。
そうして選んだのが駅前でした。引きこもっていた人間にとって、駅前というのはデメリットしかありません。人が多く、目が多く、逃げ場がありません。
それでも選んだのは、どこかで駅前で働く自分に憧れがあったからです。それと、通っているうちに人混みに慣れるのではないか、という期待もありました。訓練のつもりでした。
きれいな建物の、裏側
細い通路の先にあった風景
面接の日、指定されたのは建物の表玄関ではありませんでした。
きれいな建物の裏側にある、細い通路から入りました。そこは荷物や掃除道具で溢れかえっていて、表の世界とはまるで逆の景色でした。
驚いたのを覚えています。毎日あの表側を歩いていても、この裏側があることには気づきません。
通路の角に、簡単なテーブルと椅子が置かれていました。そこに座って面接が始まりました。
引きこもっていたことを、正直に話した
最初に聞かれたのは、なぜこの仕事を選んだのか、でした。
清掃業であれば自分にもできると思ったから、と答えました。
次に、これまで何をしてきたのかを聞かれました。ここで私は、ずいぶん長い間引きこもっていた、と話してしまいました。
悪い印象を与えたと思います。それでも、嘘をついて入っても続かないと思ったので、そのまま話しました。
最後の質問で、言葉に詰まった
最後に、何か質問はありますかと聞かれました。
私が聞いたのは、人とコミュニケーションを取らなければならない場面はありますか、ということでした。ここが一番知りたかったからです。
返ってきた答えは、こうでした。
もちろん駅ですので、清掃員であってもお店の場所やトイレの場所を聞かれたら教えます。分からなければインフォメーションセンターまでご案内します。
その瞬間、私は少し言葉に詰まりました。ほんの数秒です。けれど、面接官にはそれで伝わったと思います。この人には無理だ、と判断されたのが分かりました。
連絡は来なかった
落ちたと分かる形
不採用の場合は連絡しません、と最初に言われていました。
そして案の定、連絡は来ませんでした。
通知が届いて落ち込む、という形ですらありません。何も起きないまま、日が過ぎていって、ああ落ちたのだと自分で理解する。そういう終わり方でした。
それでも、よかったのかもしれない
一つ、面接中に気になったことがあります。
話している最中、横を清掃員の女性が通りました。面接官はその人を、下の名前にちゃんを付けて呼びました。
私は人の空気に敏感なほうです。あの一瞬で、ここは少し違うかもしれない、と感じました。
もちろん、それだけで決めつけるのは乱暴です。仲が良いだけかもしれません。それでも、雇われなくてよかったのかもしれない、と今は思っています。
ゴミ拾いに参加した日
集まったのは3人だった
次に参加したのが、ゴミ拾いのボランティアでした。
場所は、またしても駅です。人混みばかり選んでいるのは、克服したいという気持ちがあったからです。
集まったのは、自分を含めて3人でした。少ない人数です。
そして、他の2人は明らかに深い付き合いのある間柄でした。会話の速度も距離感もできあがっていて、私はそこに入れませんでした。完全に浮いていました。
拾ったもの
拾ったものは、想像より雑多でした。
アルミ缶、タバコ、ナイロン袋。子供の帽子まで落ちていました。
特にすごかったのは、パチンコ屋の周りです。タバコの量が凄まじく、しゃがんでも拾いきれないほどでした。
自動販売機の上
この日いちばん面白かったのは、リーダーの人が教えてくれたことです。
だいたいこういうところにも隠してあるんですよ、と言いながら、その人は火バサミを自動販売機の上でスライドさせました。
すると上から、アルミ缶やタバコの吸い殻がバラバラと落ちてきました。
見えない場所です。歩いていて誰も見上げません。ゴミを捨てる側からすると、あそこは目立たない捨て場所なのだと分かりました。
正直、勉強になりました。街の見え方が少し変わりました。
会話は続かなかったが、袋は一杯になった
リーダーの人は、積極的に話しかけてくれました。
ただ、私が返せたのは短い言葉だけです。会話が続きません。かたくなっている自覚はありましたが、どうにもなりませんでした。
もう一つ、しんどかったことを書いておきます。
初めて参加したからなのか、目の前にあるゴミをその人が拾わず、私に拾わせる場面が何度もありました。最初は気にしませんでしたが、効率や状況を考えると、自分ばかりが拾っている形になっていて、かなり疲れました。
それでも、終わってみると袋は一人一袋分ほど埋まっていました。
会話は続きませんでした。輪にも入れませんでした。それでも、袋の中身は確かに増えています。人と関わる形は一つではなく、隣で同じ作業をするだけでも参加にはなります。
黙々と手を動かしている間、頭の中の余計な考えが少しずつ静かになっていったのも覚えています。
そのあと、私はその人をブロックした
ここからは、あまり格好のいい話ではありません。
リーダーの人は年齢が近かったこともあって、仲良くなりたいと思ってくれたようでした。その日のうちにメールアドレスとLINEを交換しました。
そこから、それなりの頻度で連絡が来ました。次はいつ参加できそうですか、という内容です。
悪意はまったくありません。むしろ好意です。それは分かっていました。
けれど私は、拒絶反応が出てしまいました。予定を決められること、期待されること、返事をしなければいけないこと。そのどれもが重すぎて、最終的にブロックしました。
結果として、ボランティアはその1回だけで終わりました。
今振り返っても、あれが正しかったとは思いません。ただ、あのときの自分にはそれ以外の扱い方が分からなかった、というのが事実です。
行動できるようになることと、関係を続けられるようになることは、別の段階なのだと思います。私はまだ前者の途中にいます。
おわりに
4年ぶりの面接に行きました。落ちました。
ボランティアに参加しました。会話は続かず、1回で終わりました。連絡をくれた人を、自分からブロックしました。
結果だけを並べると、何も得ていないように見えます。
それでも、4年間止まっていた時間を、自分の意思で動かしたことは変わりません。結果と行動は、別のものとして数えていいと思っています。そうしないと、心のほうが先に折れます。
面接に行けたこと。応募のボタンを押せたこと。袋を一つ埋めたこと。自動販売機の上を知ったこと。
そのくらいの粒で数えていくのが、今の自分には合っています。



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