ADHD・ASDの朝の不快感を攻略する方法|発達障害と向き合う生活戦略

メンタルヘルス

朝4時ごろ、目が覚めます。

発達障害の特性で、早く目が覚めてしまうのです。そして目を開けた瞬間、最初に視界に入ってくるのは、床に散らかった靴下と、机の上で乱れたままの文房具です。

まだ何も始まっていないのに、今日は片付けと整理整頓から始まるのか、と気持ちが沈みます。

この記事では、その朝をどう扱っているかを書きます。気合いの話はしません。仕組みの話をします。

朝4時、最初に目に入るのは床の靴下

起きた瞬間から、片付けが待っている

目覚めた直後の脳は、ある意味で白紙に近い状態です。問題は、その白紙に一気に書き込まれる情報量です。

ADHDやASDの特性がある人は、情報をふるいにかけるのが苦手です。今は関係ない情報を、すべて同じ重さで処理しようとしてしまいます。床の靴下も、机の書類も、今日やらなければいけないことも、まったく同じ優先度で頭に入ってきます。

起きられてはいるのに、動けない。この状態が「また今日も何もできなかった」につながっていきます。

前日の夜に整えられない理由

前日のうちに部屋を整えておけば、こんな気持ちにはなりません。それは分かっています。

けれど実際には、寝る直前まで過集中になっていたり、注意が散らばっていたり、タスクをこなしすぎて疲れ果てていたりで、そこまで手が回らないことがほとんどです。

明日の準備をしておけば楽になると分かっていながら、できない。この繰り返しを何年もやってきました。

頭の中に流れ込んでくるもの

机の上の書類は、日中に書いた日記

机の上に散らばっている書類は、仕事の資料ではありません。日中に書いた日記です。

発達障害の特性なのだと思いますが、日中に次から次へと考えやアイデアが湧いてきます。それを書き留めた紙が、そのまま机の上に残っています。

考えが止まらないから、外に出す

たとえば、友人から相談を受けたときのことです。

普通なら友人の気持ちを考えて終わりだと思います。けれど私の頭は、そこで止まりません。その場にいた友人の相手、私から見れば他人にあたる人が、どういう気持ちで友人を試すような発言をしたのだろうか。そこまで考えてしまいます。

あるいはこういうことも書きます。今この不平不満のある状況が、もし理想の状況だったとしたら。動きたいのに動けないという感覚も、それなら納得がいくのではないか。

誰に頼まれたわけでもありません。ただ、頭の中に置いたままだと苦しいので、紙に出して整理しています。その結果として、机の上に紙が溜まっていきます。

考えなくても体が動く動線をつくる

発達障害の特性がある人が苦手なことの一つに、手順を考えながら行動する、というものがあります。次に何をするかを毎回考えること自体が、脳にコストをかけています。

朝のように情報が多くてエネルギーが少ない時間帯では、この考えるコストが致命的になります。だから、考えなくていい状態を物理的に作っておく必要があります。

洗濯は溜めてから一気に回す

部屋には洗濯カゴを置いていて、そこにまとめて放り込んでいます。

ここには工夫があります。こまめに洗濯すると、回数ばかり増えるわりに一回あたりの量が少なく、終わったときに「やった」という感覚が出ません。だから、ぎりぎりいっぱいまで溜めてから一気に回します。

そうすると達成感が大きくなります。ADHDの脳は報酬に敏感なので、これを意図的に設計してやると続きます。世間で言われている「こまめに」は、私には合いませんでした。

壁にかけて、床を空ける

小物は壁に引っかけています。

部屋が狭いという理由もありますが、比較的ミニマリストに近い暮らしをしていて、必要最低限のものしか持っていません。壁にかけることで床の面積が広くなり、きれいな状態が保ちやすくなります。

床が見えていると、散らかしたくないという気持ちが働きます。そして、新しいものを買って荷物を増やしたくないという気持ちにもつながります。結果として節約にもなっています。

欲しくなったときに思い出すこと

発達障害の傾向として、衝動的に「欲しい」と思ったものをつい買ってしまう癖があります。

これに対しては、自閉症スペクトラムのこだわりという特性を逆に利用しています。

どうしても欲しいと思ったとき、こう考えます。過去に同じように欲しいと思ったものは、今この部屋にあるだろうか。おそらくもう、ゴミ処理場に行っているはずです。あのとき強く欲しいと思った気持ちは一過性のもので、一生手元に残るものなど一つもありませんでした。

この分類にあてはめて、娯楽のための買い物は基本的にしないようにしています。

「よしよし、仕方ない」を二十代前半から続けている

自己否定の指示が、常に頭の中にある

動線を整えても、朝の脳はそれだけでは動きません。

私の中には、こだわりと自己批判と自分で決めたルールがあって、そこから少しでも外れると「ダメだ」という否定的な指示が頭の中に流れます。これが常にあります。

この習慣から抜け出すためにやっていることが、自分を徹底的に甘やかすことです。二十二歳くらいから、ずっと続けています。毎日です。

自分を甘やかしたところで、他人に迷惑が及ぶ領域ではありません。だからそこは徹底的に許していいと考えています。

完璧を保とうとすることは、自己否定を続けることと同じ

自分を批判して完璧な状態にしたとしても、満足するのはその瞬間だけです。

そして常に完璧をキープしようとすることは、自己否定を続けることと同じ意味になります。終わりがないからです。

だから、お酒で失敗したとき、勉強が十分にできなかったとき、姿勢が悪かったとき、寝る時間が少し遅れたとき、食べすぎたとき。そういう日常の当たり前の場面で「できなかった」というセリフを自分に言わないようにしています。

代わりに「やることはやった」と言い聞かせます。自分を縛るルールが、そうやって少しずつ潜在意識のほうから緩んでいきます。

最初はかなり気持ち悪かった

今でこそ習慣になっていますが、最初は違いました。

始めたときは「まあいっか」「仕方がない」よりももっと手前の、自分を愛するというトレーニングから入りました。これがかなり気持ち悪く、心がざわつきました。

自分の名前を呼んで、自分で自分を抱きしめて、大好きだよ、愛しているよ、と言う。自分の名前を呼ぶだけでも、長いあいだ嫌悪感がありました。

名前は記号にすぎない

今は、こう捉えています。

自分の名前と、この肉体と、精神は、それぞれ別のものです。名前は記号にすぎません。

私の名前は、過去には叱られるときにしか呼ばれませんでした。だからこそ、その記号と自分自身を結びつける必要はない、と俯瞰して見られるようになりました。

そのうえで、名前を自分を癒すためのトリガーとして呼びます。呼びながら体をさすったり、自分を抱きしめたりします。

すると、一瞬だけですが、子供の頃の、まだ家庭に何の問題もなかった一時期の、あの安心感がふわっと蘇ります。それを繰り返しています。

段ボールを3つ用意するだけの片付け

いらないものが圧倒的に多かった

部屋の物は、視覚的なノイズです。見た瞬間に脳の処理コストを奪っていきます。部屋をシンプルにすることは、見た目の話ではなく、脳への負担を物理的に減らす話です。

やり方は単純で、段ボールを3つ用意するだけです。いるもの、いらないもの、後で考えるもの。初日のタスクは、この3つを用意することだけです。仕分けは翌日からで構いません。

私も実際にやりました。極端な性格なので、いるものがかなり少なく、後で考えるものがその次で、いらないものが圧倒的に多くなりました。

なくて困ったら、買えばいい

手放すとき、必ず言い訳が出てきます。もったいない。使うかもしれない。ちょっと前に使った。

そういうときは、こう決めています。使う可能性があるとしても、今この瞬間に持っておきたくないものは捨てる。

なくて困ったら買えばいいですし、代わりになるものはいくらでもあります。お掃除スティックのような道具も自分で作れますし、窓を拭くスプレーも家にあるもので応用できます。

あったらいいな、という宣伝はよく見かけます。けれど、あってもなくてもいいものは、家になくていいと思っています。応用できるなら、多少手間がかかっても新しく買いません。あるもので工夫することのほうに、私は喜びを感じます。

売ったお金の使い道

手放したもののうち、まだ使えるものはメルカリで売りました。

そのお金は、自分のために食べ物や物を買うことには使いませんでした。日ごろお世話になっている人へのプレゼントにしました。

手放したものが、誰かに喜んでもらえる形に変わる。これが自分にとっては一番、生きたお金の使い方でした。

治すのではなく、攻略する

自分には発達に特性がある。そう受け入れられたとき、何かが変わりました。

自分を責めるために使っていたエネルギーが、仕組みを作るほうへ回るようになったのです。

朝の不快さは当然あるものとして割り切って、ゼロにしようとするのではなく、少しマシにすることに目標を変える。その切り替えができたときに、朝が少し軽くなりました。

診断を受けていない方にも、この考え方は使えると思います。多くの人が何らかの凸凹を持っていて、それぞれに生きにくさを抱えています。診断名にこだわるよりも、自分にとって何が楽で何がつらいのかを見つめて、自分だけのやり方を組み立てていくほうが現実的です。

なお、ここに書いたことは私の個人的な工夫であって、治療ではありません。生活に支障が出ているなら、医療機関に相談する選択肢もあります。

おわりに

朝がつらいのは、弱いからではありません。片付けられないのは、だらしないからでもありません。脳の特性が、環境とうまく噛み合っていないだけです。

洗濯カゴを一つ置く。壁に何かを引っかける。「よしよし」と口に出してみる。段ボールを3つ用意する。

全部いっぺんにやらなくていいです。一つできたら、それが今日の勝ちです。私も二十二歳から続けて、まだ途中です。

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